日々の仕事Blog
白川道さんのこと
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4月16日は僕にとって特別な1日です。恩人・白川道さんの命日。忘れたくても忘れられない強烈な個性の持ち主で、親子ほど年の離れた僕を「ありまー」「ありまー」と言っては(たぶん)かわいがってくれました。金銭感覚はおかしかったけど、字がとても綺麗な人でした。

初めて会ったのは2004年だったと思うのですが、道の向こうから歩いてくる白川さんは上下麻のセットアップ。なぜか異様にポケットが膨らんでいて、ちらちら見ていたら右のポケットから500万、左のポケットから400万。「なにこの人?」って思いました。「競輪だよ競輪」って言ってガハハと笑う白川さんを見て、やっぱり「なにこの人?」って思いました。
強烈なのはそれにとどまりません。初めて会った日に銀座に連れていってもらって、「これが無頼派作家か」なんて感動していたら、その1週間後くらいには「金を用立ててくれ」と言われました。しかも「出どころは問わねえからなんとかしてくんねえか」と。「出どころは問うてくれよ」って思いました。なんせ当時の僕は極貧契約社員だったのですから。「900万はどこにいっちゃったんですか?」って聞いたら、「野暮なこと言うなよ」って笑ってました。気合いで用立てました(その後、ちゃんと返してくれました)。
そんな白川さんとの日々は『竜の道』という文庫作品の解説に書かせていただいたのですが、彼との時間が僕を編集者に育ててくれたことは間違いありません。ユーモアで交わしていいのか、真正面から向き合うべきか、作家と向き合う際の機微を教えてくれたのは白川さんでした。
豪放磊落に見えて、実は繊細だった白川さんからある日、「作家、辞めるわ」と電話をもらったことがありました。僕は咄嗟に、当時白川さんが好きだった「あまちゃん」よろしく、「じぇじぇじぇ」と答えたのですが、それで白川さんは笑ってくれて、「今どこいるんだよ、飯いこうぜ」と言ってくれました。飯を食いながら、「お前、こっちが真面目に話してんのに、じぇじぇじぇはねえだろう」と大笑いする白川さんとの時間が編集者としてどれほど貴重だったか。こちらが求めるペースで原稿を書いてくれる人ではなかったけれど、僕は白川さんが大好きでした。
そんな白川さんのデビュー作が『流星たちの宴』。流星舎という社名はこの作品から「流星」をいただきました。白川さんが生きた株の世界の男たちの大勝負を骨太に描いたハードボイルド小説で、その中にこんな一節があります。
――真実なんてのは、いつだって時間の洗礼を受けなければ見えてきやしない。時間の渦中にいる以上、生きている今の真実など確かめようもない。
流星舎は、一雫ライオンさん『六月の満月』で船出しました。4月24日にはラッパー般若さんの『般若、井戸を掘る』が発売を迎えます。「時間の渦中」を生きられることの喜びを噛み締めて、一冊一冊を丁寧に作っていこうと思います。