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『六月の満月』(一雫ライオン)ができるまで⑬

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六月の満月』の原稿は印刷所に入稿した、ゲラにもなった、デザインの打ち合わせもした。
結構ちゃんと進められている感じがします。そうこうしているうちに2026年になりました。

そして、2026年に入ってからは記憶が曖昧なくらい忙しくなりました。今までの仕事人生を振り返ると「あの時期はハードだったな」と思う期間がいくつかありますが、2025年末からの日々もおそらく将来振り返ったらそうなるだろうと思います。なかなか楽しい日々でした。

これは『六月の満月』とは別のことなのですが、ゲッターズ飯田さんのイベントで全国あちこちに行き、2027年版の編集もぼちぼち始まり、さらにはラッパー般若さんの書籍『般若、井戸を掘る』の編集も佳境を迎えていました。それ以外にも進行している企画もあり、その他にも会社として初めての決算があったり、とにかくあれこれ押し寄せました。

そんな中で、ライオンさんと相談して『六月の満月』のプルーフを作ることにしました。正確には「校正刷り」と言うようですが、書評家や書店員の方に読んでもらうための簡易製本みたいなものです。昔はゲラで読んでいただくことが多かった記憶がありますが、近年はプルーフが圧倒的に多いと思います。

こんな感じのやつです。

幻冬舎時代にもプルーフ作成をしたことはもちろんありました。作業としては、

1:ネームを作成して著者に見せる→入稿する
2:ゲラを確認して、修正があれば赤字を入れて戻す
3:出来上がったプルーフを編集と営業で各所にお送りする

という感じ。幻冬舎時代との大きな違いは3でした。書評家やメディアに送るのは経験がありましたが、書店員の方にプルーフを送ったことはなかったので、「『六月の満月』を書店員の皆さんにどうやって読んでいただくか」が課題だったのです。幻冬舎時代はこれは営業局の方達がやってくれたので、僕は「どれくらい応募があったか」と教えてもらうだけでした。でも、流星舎は僕ひとり。僕がやらないと何も前に進みません。

「さて、どうしよう」。流星舎を立ち上げてからの日々を一番シンプルに表現すると、これに尽きるような気がします。「どうしよう」ってなって、「どうにかする」というか。もちろん、色々な人に助けていただきましたし、今回も詳しそうな人に教えてもらいました。プルーフに同封する注文書も人の助けを借りながら作成。友達がPowerPointで叩き台フォーマットを作ってくれたとき、「え?パワポ使えるの?」と驚きつつも感謝したり。よく知る誰かの知らなかった一面を知ることができたのは、多忙な日々の中でも心躍る瞬間でした。「助けて」って言うと(何気に苦手)人って助けてくれるもんだなあ、という気づきを得たのも大きかった。

最終的に「Googleフォームで募集しよう」となったのですが、僕は基本的にこの手の作業が不得意です。不得意というか、「聞いたことはあるけど……」レベルでよくわかりません。それでもなんとかなりました(それほど難しい作業じゃなかったので、得意げに語るほどではないのですが)。募集を始めた途端になぜかサイトにアクセスできなくなった時は、「なにこれ?笑えない」とさすがに焦りましたが。

「さて、どうしよう」も1つ2つなら刺激と捉えることもできますが、いくつもそれが重なると正直嫌になります。1つの作業にかかる時間も膨大で、「あー、もう!」と言ってばかりだったと思います。それでも頑張れたのは、この思いが消えることがなかったからです。

『六月の満月』を多くの人に読んでいただきたい。

この思いがあれば多くの困難はなんとかなるものだと思います。むしろ、編集者からこの思いが消えたらやってられないかもな、とも。特殊技術を駆使する仕事ではありませんが、相手は人間ですし、しかも作家は繊細ですし、嘘やごまかしは見破られます。情熱の有無、あるいは多寡によって、面白くもつまらなくもなるのが編集者という仕事かもなと思っています。

僕は、一雫ライオン作品の読者が増えれば日本が良くなると思っています。不器用な優しさ、泣けるやせ我慢、日陰への温かい眼差し。彼の人生観が凝縮されたような物語を読むと、「いいもん読んだなあ」と思えるのです。行間に人間くささが溢れていて、しかも決して小難しい物語ではなく、読後に少しだけ優しくなれる物語。そう思っているので、「『六月の満月』を多くの人に読んでいただきたい」という思いが消えることはありませんでした。

そして、『六月の満月』プルーフ募集にご応募があった時の感動と言ったら。小さな一歩かもしれませんが、ライオンさんと僕にとっては忘れられない一歩でもありました。ご応募くださった皆様、本当にありがとうございます。こういう感動はまぎれもなく前進エネルギーになりました。