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『六月の満月』(一雫ライオン)ができるまで⑮

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前回の記事から少し時間が空いてしまいました。今回は「プルーフを送った後、何が起きるか」という話です。

前回も書いたように前職時代は、

1:ネームを作成して著者に見せる→入稿する
2:ゲラを確認して、修正があれば赤字を入れて戻す
3:出来上がったプルーフを編集と営業で各所にお送りする

の3の領域で「書店員の方に送る」というのは営業局の方達にやってもらっていました。でも、『六月の満月』では、それを自分でやらないといけない。プルーフはGoogleフォームから応募してもらう形にしたのですが、初めてご応募をいただいた時は「やった!」と小躍りしました。とにかく嬉しい。応募がない日はなんか気持ちが沈むし、一件でも応募があれば嬉しくなってライオンさんに電話したくなる。この仕事を20数年やっていた人間の感慨ではないかもしれませんが、一喜一憂の日々でした。泰然自若とは程遠い自分がいて、そんな自分が新鮮。ご応募をいただけたことをライオンさんが喜んでいるのが伝わってきて、それも嬉しい。

そして数日経って、読んでくださった書店員の方から感想が届きました。応募フォームには注文希望数の欄も作っていたのですが、そこに数字が記入されている。ご注文をダイレクトにいただくと、作る側の人間としては、めちゃくちゃ嬉しい。感謝の気持ちとか、お礼状書こうかなとか、とにかく心が騒がしい。

つまり、「プルーフを送った後、何が起きるか」というと、「心が動く」のです。

前職時代だってもちろん心は動いていたのですが、なんというか、もっと生々しく動く。ライオンさんとは笑ったり言い合いをしたりの濃い日々をご一緒していたので、「担当編集者として嬉しい」というよりも、なんというか「アニキ、やったぜ」みたいに兄弟を祝福する感覚。一方で、応募がないことを想像するだけでなんか怖い。希望と恐怖のジェットコースターみたいな感じ。いただいた感想なんて、何回読んだかわからないくらい読みましたし、「こんな感想をいただきました」とライオンさんに電話しまくっていました。

『六月の満月』はライオンさんと二人で作り上げた小説だったので、僕ら以外の方から感想をいただくのは初めてでした。だから、「面白かった」と言われると、めちゃくちゃ嬉しい。

これは流星舎としての刊行第二弾『般若、井戸を掘る』でも同じでした。こちらはプルーフを作成したわけではないのですが、ゲラを読んでくださった方から感想をいただくと、すごく嬉しい。一方で、「面白くなかったのかな」と思うようなことがあると、とても悲しい。

20数年も同じ仕事をしていると、どうしても「慣れ」が生じます。でも流星舎としての日々がスタートしてからは多くのことが「不慣れ」だったので、心の弾力が戻ったような感覚がありました。それもこれもすべて、書店員の方たちからいただいた感想のおかげ。言葉の力に改めて気付かされた日々でした。

その「言葉の力」は『六月の満月』にも宿っています。「この台詞がよかった」「この一文が響いた」などの感想を読んでいると、「ライオンさん、頑張ってよかったなあ」なんてしみじみ思ったりするのです。

本を作るって、やっぱり面白い。人とも出会えるし、心が動くし。