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編集者の1週間(1)

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 先日、友人に「毎日何やってんの?」と聞かれました。編集者って何やってるかよくわからないところもあるので、自分の一週間を書いてみようと思います。もちろん、編集者によって全然違うと思うので、あくまでも1つのサンプルとして。でも、振り返ると「ここには書かれないこと」というか、本を読む時間だったり、調べ物だったり、電話だったり、考え事だったりの時間のほうが長いような気がします。動きながらそういうのをやっていることも多いのですが。

6月30日(月) 千葉→渋谷→銀座

きたみりゅうじさんに会うために千葉へ。きたみさんは僕が初めて作った単行本『新卒はツラいよ!』の著者で、『人生って、大人になってからがやたら長い』など単行本や文庫で何度もお仕事ご一緒させていただきました。きたみさんと初めて会った頃の僕はアルバイトで、社会の常識がよくわかっておらず、社外秘の資料とかを見せてしまってきたみさんに気を使わせてしまったり。お会いするのは10年以上ぶりだけど、言ってみれば編集者としての赤ん坊時代を知ってくださっている方なので、久しぶり感はあまりなく。どうしたって昔話もするけれど、今何をやっているか、お会いしていない時期をどう過ごしていたかなど、様々な話を。編集者ってタテにもヨコにも話ができるのがいいと思っていて、あらゆる話題を拾えて、テーマによっては深掘りもできるみたいなのが(僕の)理想なのですが、こうやって久々にお会いした方と話す時に、自分の現時点でのタテヨコのレベルが確認できるような気がします。きたみさんとはまたお仕事ご一緒したいと思っているので、久しぶりにお会いできて、比較的ゆっくり話せて、しかも色々なテーマでの話ができてよかった。

そういえば、きたみさんの『新卒はツラいよ!』のデザインはbookwallの松昭教さんが担当してくれたのですが、流星舎のロゴを作ってくれたのも松さん。「小説幻冬」を創刊した際もデザインは松さんにお願いしたし、気づけば20年の付き合いの松さんに改めて感謝。

夜に渋谷で用事があったので顔を出したら、ある案件でちょっとトラブルというか、行かなくていけない事情が生じて銀座へ。シリアスな気分で到着したら、サプライズというかドッキリで、「独立おめでとう」の一席。嬉しくて飲みすぎてしまう。

7月1日(火) ゲラ作業→ゲッターズ飯田さん→幻冬舎→ゲラ作業

最近は集中できる時間が短くなった実感があって、そうなると作業効率がテキメンに落ちるので、集中力を要する仕事は午前中に(脳みそがまだ元気だからか集中できる)。ここ1〜2ヶ月は特にそうで、ゲッターズ飯田さんの本の原稿整理やゲラ作業を朝からやっています。僕が作っているのは手帳ですが、全12タイプあるので、間違いがないように何度も確認したり、飯田さんに確認すべきことを箇条書きにしたり、そういう細々としたことをひたすらやり続けます。人によるのかもしれませんが、僕はこういう時間が結構好き。どの本にも言えることですが、著者はその分野の専門家なので、編集するということは「先生から直接教えを受ける」ということにもなります。それって編集者の特権の一つだと思っていて、気づけばその分野にちょっと詳しくなっていたり。あと、僕は文具が好きなので、ゲラ作業は色々なペンが使えて楽しい。

午後にゲラを受け取りに飯田さんとお会いする。飯田さん、すごい忙しいはずなのにゲラのチェックに抜かりがなく、しかもいろんなことに興味を持っているので話が面白い。「売れている著者」ってやっぱりエネルギーが尋常じゃなく、会うとこちらまで元気になります。飯田さんからいだいたゲラを持って幻冬舎へ。スケジュールのこととかでちょっと打ち合わせ。

その後、仕事場に戻ってゲラ作業。夕方過ぎるとしっかり脳みそは疲れているので、「ここをもう一回チェックしておこう」ということのリスト化とか、ざっくりした赤字の転記作業とか、進めている企画の状況整理とか、そういった仕事を2時間くらいかけて。

帰宅して、最近ハマってる「テッド・ラッソ」を観たり、録画した「ダーウィンが来た!」を観たり、最近配信された「イカゲーム3」を観たり。

7月2日(水) 世田谷→表参道→西麻布

朝からゲッターズ飯田さん書籍の編集作業。小さいミスを見つけて、「このタイミングで気付けてよかった」とか思ったりする。

午後、表参道で2件の打ち合わせ。そのうち1件はコピーライターの礒部さんと。本にしたいと思っている案件があって、それを書くとしたら礒部さんしかいないと思っていて、その件で。彼との話はキャッチボールの典型というか、こっちが投げた言葉を彼が味付けして返し、その球にこっちも味付けして返すみたいな感じ。たまに味付け自体に夢中になって、単なる戯言みたいになる時もあるけど、気づいたら「それ面白そうじゃない?」と思える何かに辿り着いている感じ。具体と抽象が入り混じる彼との話はそれ自体が面白い。楽しむだけではなく、スケジュールとお金の話はしっかりと。ここをなあなあにすると軋みが生じるというか、親しき仲でも揉め事に発展しかねないので。

夜、西麻布で会食。恩人に設けてもらった一席で、楽しい時間だった。人の心の柔らかい部分を見抜く天才みたいな人で、お店の外で「今日はありがとうございました」「タクシー拾いますよ」なんてやり取りをしていたら、「苦しくなったら連絡しろよ」とか言われてなんか感動。そういう姿は見せないようにしていたのに。歩いて表参道に向かいながら、安全地帯の「安全地帯Ⅱ」を聴く。