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一雫ライオンさんの長編小説2作品に関して(書き下ろしと連載)
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一雫ライオンさんの長編小説を2本同時進行で編集しています。一つは書き下ろし、もう一つは夕刊紙連載。
書き下ろしと連載を同時進行で進めるというのもあまりないような気がするので、せっかくなので記録に残しておこうと思います。
書き下ろし作品のタイトルは『六月の満月』、連載作品は『十二の眼』というタイトルです。ライオンさんとは『二人の嘘』という小説をご一緒したので、偶然ですが、数字、しかも偶数に縁があります。
『六月の満月』と『十二の眼』、やっかいなことに作品の性質が異なります。『六月の満月』の方は引っ込み思案なタイプ。主要登場人物の人物造形によるところが大きいのですが、物語を動かすためには作家としての腕力が必要な感じの作品です。一方の『十二の眼』はやんちゃなタイプ。物語の膨大なエネルギーが暴走して突っ走ってしまいかねないので、時にはブレーキを踏まないといけない感じです。
面白いのは、異なる性質の作品なのに、どちらも「ライオンさんっぽいなあ」と思える世界観であること。何よりも登場人物に魅力があります。彼自身が人生の端々で味わったり見聞きしてきた「生きた人間」の息吹を感じるので読み応えがあります。
『六月の満月』はライオンさんが2回目の修正を終えて原稿を送ってくださったのですが、一方で『十二の眼』の締切も毎月やってきます。4月以降、毎日のようにどちらかの作品に関してライオンさんとやり取りして、毎週?毎月?のように原稿をいただいています。どんな感じかというと……。
4月3日 『六月の満月』初稿原稿をいただく
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5月10日 『十二の眼』の1〜22話を入稿
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6月10日 『六月の満月』第2稿をいただく&『十二の眼』23〜32話を入稿
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6月17日 『十二の眼』33〜43話を入稿
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7月9日 『十二の眼』44〜63を入稿
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8月9日 『六月の満月』第3稿をいただく
という具合です。こう書くとすっきりしているように見えるのですが、例えば4月3日に『六月の満月』の初稿原稿をいただいたあと、4月20日に2〜3時間くらいの打ち合わせをして、さらには『十二の眼』の展開を考えてもらって……という感じになるので、1ヶ月があっという間に過ぎていきます。『十二の眼』に関しても入稿前には数回のやり取りが。いただいた原稿に僕なりの意見を書き込んでライオンさんにフィードバック、それに関するやり取りを電話で数回、みたいな感じです。いただいた原稿に書き込みをしたPDFをメールで送って、出先で30分確保してライオンさんに電話、ということもざらにあります。
でも、それほど大変とも思っていません。なぜなら、「こういうふうにしたらどうか」という僕の提案に対して、ライオンさんが僕の想像を超える面白さで返してくれるからです。刊行までもう少し時間がかかってしまいますが、どちらの作品も充実の読書時間を提供する作品に仕上がると思うので、楽しみにお待ちください。
下に貼り付けてあるのは、『六月の満月』と『十二の眼』の作品概要です。結構前に作成したものなので、この通りにいくかどうかはわかりませんが、これも記録の一つとして。こういうのって、編集過程で迷いが生じた時に立ち返る場所として重視しています。「こういう小説にしましょう!」と盛り上がった時の初期衝動を思い出すと言いますか。