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『六月の満月』(一雫ライオン)ができるまで⑪
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『六月の満月』の初稿から第2稿にかけて登場人物の人物造形の修正をした話を前回書きました。今回は、その修正を受けてストーリーを修正した話です。
2025年4月3日に初稿をいただいた『六月の満月』。すぐに修正に取りかかってもらいたかったのですが、日刊ゲンダイで6月からスタートする長編小説『十二の眼』があったので、4月から5月上旬にかけては主にそちらに取りかかっていただき、『六月の満月』の第2稿をいただいたのは6月上旬でした。この時期からライオンさんが2作同時進行で書き進めていきます。

もちろんライオンさんは大変だったと思うのですが、結果としてこれが良かったね、という話をライオンさんとよくしています。『六月の満月』は書き下ろしで、(特に前半が)静かな物語、『十二の眼』は連載で、物語冒頭からトップスピードのエンターテインメント小説。相互に作用しあって、良い循環を生み出したのです。『六月の満月』には疾走感を、『十二の眼』には重厚感を、という感じです。
『六月の満月』の主人公の章吾と実日子は、決して派手な性格ではなく、他者と積極的に絡んでいく人間ではありません。そういう性格の二人だけに、下手をしたら物語前半が地味になる可能性がありました。ここに良い作用を及ぼしたのが『十二の眼』。ただ、二人の関係を性急に近づけようとしたら、物語から品性のようなものが失われてしまいます。そこでライオンさんと話したのが、
・プロローグで描く場面を変える
・章吾と実日子が出会い、関係を深めていくのはゆっくりでいい。その代わり、新しい登場人物を出して章吾とやり取りさせることで物語に「動き」を出す
などでした。他にも色々あるのですが、ネタバレにもなるので伏せます。ライオンさんはWordで原稿を書いていて、1ページのレイアウトが40字×40行なので、
「この場面をもっと早めにした方が物語への興味が高まると思うので、ライオンさんのレイアウトで25ページあたりに来るようにできませんか?」
というようなやり取りを山ほどしました。人が人を思う気持ちの繊細さだったり、登場人物が発した台詞の強さや深さだったりがライオンさんの小説の良いところだと僕は思っています。なので、「人と人を出会わせてください」「章吾が人とやり取りするシーンを増やしてください」といったお願いをたくさんしました。
5~6月のライオンさんとのやり取りをまとめるとこういう感じになるのですが、この時期は本当に毎日のように作品の話をしていました。ライオンさんはもちろん、僕も『六月の満月』(と『十二の眼』)にどっぷり浸かっていました。そして8月上旬、『六月の満月』の第3稿が届きます。
「めっちゃ面白いよライオンさん!」
と思わず電話するくらい、物語が輝きを発していました。
「章吾と実日子のことがだいぶ好きになりましたよ」
とライオンさん。
ライオンさんは、原稿を修正する際に大きな特徴があります。打ち合わせの通りに直すのではなく、何か一つアイデアを載せてくるのです。修正原稿を読みながら「こうきたかー!」と驚くことがざらにあります。編集者だろうがなんだろうが「読んだ人を驚かせたい、楽しませたい」という気持ちの表れだと思うのですが、ライオンさんがそういうモードになってくれたおかげで、『六月の満月』は表情豊かな物語になりました。
大きな直しは終わりましたが、また完成ではありません。この原稿を踏まえて、第4稿以降で「矛盾の整理」と「さらに面白くするためのブラッシュアップ」をライオンさんはしてくれたのです。