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『六月の満月』(一雫ライオン)ができるまで⑨

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六月の満月』は2025年1月末に原稿をいただく予定で進めていました。
なのに、1月上旬に「全体を10としたら、まだ半分にも達していないこと」が発覚。
ライオンさんは「展開は頭の中にある。月末までに間に合わせる」とのこと。

※書店員の皆さまへ 『六月の満月』の注文書はこちらになります。

普通に考えて、1月末に間に合わせるのは無理です。もっと早くに「どれくらい進んでいるのか」を聞いておくべきでした。ライオンさんが「間に合わせる」とおっしゃってくれたのは、「流星舎として最初の刊行作品になるから」という思いがあったからだと思うのですが、それを優先した結果として作品からライオンさんらしさが抜け落ちたら意味がありません。ライオンさんを信じて待つ、という態度を取り続けたのは、編集者としての怠慢だったと今は反省しています。

「ライオンさん、〆切を遅らせましょう」

編集者としては「何とか間に合わせてください」というべきかもしれませんが、僕はそう提案しました。スケジュール的に無理だと思ったというのもあるのですが、電話の向こうのライオンさんの様子から「〆切を後ろに倒す」が最善と判断したからです。ただ、その判断は別の意味でリスクを伴いました。実はこの時期、もう一つの長編小説の連載(『十二の眼』)がほぼ決まりかけていて、その作品のことも考えなくてはいけなかったのです。ライオンさんの2025年は「『流氷の果て』刊行、長編2作と短編1作の執筆」という予定になっていて、長編2作と短編1作は僕が原稿をいただくことに。ライオンさんの体のことを考えると負荷をかけすぎかもしれません。でも、ライオンさんは

「僕の体のことはそんな気にしないでいい。どんどん書きたい。書きたい物語がある」

とおっしゃっていました。小説家としてのキャリアで言えばまだルーキーとも言えるライオンさんにとって、2025年は大きなチャレンジの年でした。2024年の段階では「来年は働かないといけませんね」なんて軽口を叩いていたのですが、2025年に入るやいなや、ライオンさんも僕も余裕がなくなっていったように思います(その証拠に、大好きな野球の話のあんまりしなかったし、会ってお酒を飲みながら話す機会も減りました。そのかわり、毎日のように電話していましたが)。

ここはもう遠慮している段階ではないと思った僕は、「『六月の満月』は実際どんな感じなんですか? 僕がお手伝いできることはありますか?」とそれまで聞くに聞けなかったことを聞いてみました。ライオンさんの話を聞いた僕の感想は、「予定よりだいぶ遅れるかもな」というものでした。なんか、ライオンさんが苦しそうなのです。『流氷の果て』から休みなく『六月の満月』に取り組んだことで、メンタル的にも準備の面でも余裕がなさすぎました。「苦戦してるんだな」と思いはしたのですが、長編連載のことを考えると無制限に〆切を伸ばすことはできません。『六月の満月』の〆切を2月20日にすることにしました。

「仮に書き終えていなかったとしても、その時点で書けているところまで僕に送ってください」

僕はライオンさんにそうお願いしました。『二人の嘘』は脱稿してから原稿をいただきました。『六月の満月』もそのつもりでした。でも、そうならないかもしれない。執筆という領域に関して、編集者ができることはそれほど多くありません。ただ、この時は「途中でもいいから、とにかく原稿をいただく」という形で状況を動かそうと思ったのです。2月20日に設定したのは完全に僕の希望。流星舎を法人登記する日をその日にしようと思っていたのです。「会社を登記した日にライオンさんから『六月の満月』の原稿をいただく」ということを夢想しました。

220日。ライオンさんは『六月の満月』を脱稿することができませんでした。でも、途中までの原稿を送ってくれました。思い描いた形ではなかったけど、ライオンさんと取り組む新作です。気合いを入れて読み始めた僕は、「……こりゃまずいな」とまたまた思う羽目になったのです。一難去って(去ってないけど)、また一難。