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『六月の満月』(一雫ライオン)ができるまで⑤

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作家が他社の作品書いてる時、編集者は何をしているのか。先日、友人にそんな感じのことを聞かれました。僕に関して言うと、特別なことは何もしてないような気がします(偉そうに書くほどのことではないですが)。でも、ライオンさんにはよく電話していました。

ライオンさんが2023年に取り組んでいた『流氷の果て』は講談社刊行作品です。ライオンさんは、「いま取り組んでいる作品」に思考エネルギーの大半を費やす方なので、『流氷の果て』に対して本格的な執筆モードになってからは、基本的には『六月の満月』の話はしていなかったと思います。

そこで、電話です。ライオンさんは電話を嫌がる人ではないので、それに甘えてよく電話していました。「この時間は執筆時間じゃないな」とか「このニュースのことはライオンさんも気になってるだろうな」とか、そんなことを考えたり見つけたりしながら、「もしもしー」と。『二人の嘘』絡みでの連絡もあったので、仕事での連絡もあるにはあるのですが、共通の趣味である野球の話だったり、他愛もないことでもちょこちょこ連絡していたように記憶しています。

その際、もちろん「『流氷の果て』はどうですか?」とか「体の調子はどうですか?」という話もします。結果として、このやり取りの積み重ねが良かったように思います。「ライオンさんは作品のそういうところを気にするのか」とか「元気そうに見えるけど、こういうところには今後注意しよう」とか、会話の中で色々な発見があるからです。

『二人の嘘』の執筆期間より、2023年のほうがライオンさんに連絡する回数は多かったと思います。逆に、僕が『流氷の果て』の担当編集者だったらそんなに電話しなかったかもしれません。担当編集者からの電話自体が原稿催促にもなりかねず、ライオンさんを変に苦しめてしまう可能性もあるから(イライラされてしまう可能性もあるし)。連絡しなさすぎるのも問題なので、ここら辺の塩梅はいつも難しい。

この時期の連絡で、僕から『六月の満月』のことを話すことはほとんどありませんでしたが、ライオンさんは作品アイデアが頭に浮かぶと嬉しそうに話してくれることがあります。毎回というわけではありませんが、何らかの電話で話した流れで『六月の満月』の話になり、「こんなふうにしようと思ってるんですよね」などと話してくださることは何回かあって、「めっちゃ面白そうじゃないですか」とか「切なすぎる!」とか、特に編集者らしいとは言えないリアクションだけで「待ってますからね」アピールをしていた感じでした。

苦しみながらも『流氷の果て』を書き続けるライオンさん。つまり、『六月の満月』の執筆スタートの時期が迫ってきていました。僕はライオンさんにあることを告げなくてはいけなくて、何となく気もそぞろでした。

流星舎を立ち上げようと考えていたのです。そのことをライオンさんに話したのは2024年3月のことでした。場所は三軒茶屋。三茶で話すことになったのは偶然にすぎないのですが、自分が生まれ育った街でもあるので、何となく感慨深いものがありました。そして、妙に緊張もしていました。

というわけで長くなったので、続きはまた次回。